『租税実体法の解釈と適用・2』

                                               札幌桜税会会員  斎藤 雅昭

 

第2章 租税実体法の解釈方法論―その2

 

1 「国庫説」と「人民主権説」の対立

 「納税の要件に該当する場合には、納税義務が生ずる。」この納税要件(課税要件)
 を規定するもの=「租税実体法」

 従来、法人は営利を目的とする経済合理人であるから、法人としてあるまじき行為は、
法人税法第132条「同族会社の行為計算の否認に関する規定」で否認=「経済的基準説」

 

    税務当局はこの「経済的基準説」により課税

●法人には税法上の借地権が存在するため、土地の無償貸借あるいは無償譲渡等は法人税
 法132条で課税(「国庫説」により支持)

          |  法人税法132条をめぐって対立―法律と経済の混同

●法律に書かれていないから租税法律主義に反するので課税すべきでないとし、法人税法
 132条は憲法違反=極端な「法的基準説」
(「人民主権説」により支持)

 

  税法の対象となる利益(所得)の前提には、民法・商法が規定する取引行為がある。

   百貨店が不特定多数の顧客に対して五割引きの販売行為→課税対象なし

   特定な者のみ安く販売やただでやった場合の贈与行為→課税対象あり

             ↓

        法人税22条で理解すればよい

   「無利息貸付」――法人税法132条のみで解釈しない

      通達―以前おおむね10%の認定利息→商法514条―6%

      親会社子会社間で合理的理由あり―無利息

 

2 権利の性質は「法的基準説」で捉え、評価は「経済的観察方法」で行う

●「経済的基準説」(税法対象の所得概念がそもそも経済的概念→経済的視角から捉える)
  ≠「経済的観察方法」
(税法解釈における実質主義(*)による見方=社会通念、常識
    と一致しない経済的な常識や不合理性
(租税回避行為)で否認し得るとする見方)

  「経済的観察方法」は所得概念の決定の問題ではなく、経済的評価の問題であるから

●「法的基準説」(税法対象の所得概念が税法に取り込まれた以上法的概念→法の視点か

 ら把握)   

 *「事実認定における実質主義」(真実の法律効果に違法性がある(仮装行為・虚偽表示
  ・事実隠蔽
)として否認し得るとする見方)

【結論】権利の性質を法律的に見る「法的基準説」を貫き、同時に権利の値打ちの評価は
   「経済的観察方法」によって行う。

 

3 企業利益と課税所得の概念の根本的相違点について

●税法の所得(課税所得)―帰属の概念(帰属的概念)=企業活動を含めたすべての活動から
            生ずる「純資産の増加」が企業に帰属  

●企業会計の利益(企業利益)―発生の概念(発生的概念)=企業活動から生ずる「純財産の
              増加」が発生

      所得を経済的な捉え方と法律的な捉え方の違いによる

            |

    実質課税(*)で解釈する

      *本来の実質主義とは処分をする場合事実を正確に把握しなければならないが、
     これは税法だけの問題ではない。

     しかし、税法は解釈上実質主義を認める場合あり――法人税法132条

【結論】租税回避を防止するため、法人税法22条ではまかないきれない場合に補充的規
   定として法人税法132条が存在する。

 

4 文理解釈と論理解釈(目的論的解釈)

   法の解釈の方法論として

   「租税実体法」では、税の公平な負担を前提として、文理解釈ではおさまらない場
   合に論理解釈

(
*)(目的論的解釈:規定全体の趣旨、目的を追求して法令の正しい
   意味を明らかにする
)を補正的に適用する。

       *論理解釈とは、単に法令の文字、用語だけにとらわれることなく、物の道筋、
     道理、条理を取り込んで法律を解釈することを言う。

【結論】課税所得概念と企業利益の本質的な違いを踏まえて、法人税法132条と「経済的
   観察方法」を評価として取り込んだのである。