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租税法務学会 裁決事例 農地転用決済金は譲渡費用に当たらないとされた事例 (平15.7.29裁決、裁決事例集No.66 97頁) 平成17年6月18日 税理士 吉村 達也 1 事実 (2)審査請求に至る経緯 原処分庁は、平成13年7月30日付で次表の「決定処分等」欄のとおり、決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分をした。
ロ 次いで、原処分庁は、平成13年9月26日付で表の「更正処分等」欄のとおり、減額の更正処分及び無申告加算税の変更決定処分をした。 ハ 請求人は、更正及び変更決定後の原処分に不服があるとして、平成13年9月28日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成13年12月6日付で上記イの表の「異議決定」欄のとおり原処分の一部を取り消す異議決定をした。 ニ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成14年1月7日に審査請求をした。 (3)基礎事実 イ 請求人は、自己の所有する田2,378平方メートルをH株式会社に譲渡したこと。 ロ 本件譲渡について、平成12年6月6日付で売主を請求人、買主をH社とする不動産売買契約書が2通存在し、 そのうちの1通は、媒介業者が株式会社J、売買代金が39,563,700円とされ 特約条項として、農地転用決済金及びQ町農地転用に係る諸規定による協力金(以下、「本件地元協力金」という。)は売主の負担とする旨の記載があり、 他の1通は、売買代金が34,638,500円とされ、特約条項及び媒介業者の記載がないこと (以下前者を「本件売買契約書A」といい後者を「本件売買契約書B」という) ハ 請求人は、本件土地の売買代金として、H社から 平成12年6月6日に 3,000,000円、 平成12年9月25日に 31,638,500円 をそれぞれ受領していること。 ニ H社は、本件土地に係る農地転用決済金として、 平成12年7月24日、K土地改良区(以下「本件土地改良区」という。)に1,208,530円 平成12年7月31日、L土地改良区に 126,670円 をそれぞれ納付したこと (以下K土地改良区に納付した農地転用決済金を「本件農地転用決済金」という) ホ 本件農地転用決済金に係る平成12年7月24日付の本件土地改良区からの通知書には、要旨次表のとおりの記載があること。
上記の表のうちの維持管理費 1,189,000円 を以下「本件金員」という。 ヘ 本件地元協力金は、当初、 3,590,000円 であったが、 最終的に 1,400,000円 になり、 その差額 2,190,000円 は、 H社から平成13年4月13日に 1,000,000円、 平成13年7月2日に 1,190,000円 が それぞれ請求人に支払われたこと。 ト 原処分庁は、本件譲渡について 本件売買契約書Bに記載された売買代金 34,638,500円 のほか、 本件農地転用決済金 1,208,530円、 L土地改良区に支払った農地転用決済金 126,670円、 本件地元協力金 1,400,000円 上記ヘの請求人に支払われた差額金 2,190,000円 を加算して、 譲渡所得の総収入金額を 39,563,700円 としたこと。 チ 原処分庁は、本件譲渡に係る譲渡所得の金額の計算に当たり、総収入金額から控除する取得費については、総収入金額の100分の5に相当する金額1,978,185円としたこと。 リ 原処分庁は、本件譲渡に係る譲渡費用の額を 仲介手数料の金額 1,309,000円、 登記費用等の金額 36,700円 本件地元協力金 1,400,000円 の 合計額 2,745,700円 としたが、 本件農地転用決済金及びL土地改良区に支払った農地転用決済金ついては、譲渡費用の額に算入しなかったこと。 ヌ 本件土地改良区は、土地改良法の規定に基づき 「K土地改良区定款」(以下「本件定款」という。)、 「K土地改良区規約」(以下「本件規約」という。)、 「K土地改良区地区除外等処理規程」(以下「本件処理規程」という。)、 「K土地改良区地区除外等処理規程内規」(以下「本件処理規程内規」という。) 「転用決済金(維持管理費)の変更について」(以下、「本件維持管理費算定基準」といい、本件処理規程及び本件処理規程内規と併せて「本件処理規程等」という。)を定めていること。 ル 本件譲渡は、優良住宅地のための譲渡に該当すること。 イ 決定処分について (ロ)本件譲渡による所得は、譲渡所得である。 (ハ)個別通達 土地改良事業に係る受益者負担金の課税上の取扱については、 〔1〕
土地改良施設の敷地等の土地取得費及び農地の整備、造成に要した費用等の「永久資産取得費対応部分」については、譲渡所得の取得費に算入され、 〔2〕
水路・ため池の掘削費用、公道・農道の整地費、盛土費及びこれらの工事の測量費等の「繰延資産取得費対応部分」については、農業に係る事業所得の必要経費に算入され、また、これらに係る未償却残高は譲渡費用とされ、 〔3〕 上記〔1〕及び〔2〕以外の「維持管理費相当部分」については、農業に係る事業所得の必要経費に算入されることとなる。 (ニ)これを本件についてみると、上記の各事実から、本件金員は、本件譲渡の年の翌年以降の将来に渡る土地改良事業の維持管理費と認められる。 土地は譲渡しないが、農用地以外に転用する場合には徴収され、 逆に、土地は譲渡するが、転用を伴わない場合には徴収されない のであるから、組合員たる資格に係る権利の目的である土地の譲渡とは直接の関係のないことは明らかである。 土地改良事業に係る将来の維持管理費を一括前払するもので、将来の収益に対する期間対応費用であると認められ、 本件土地取得の直接の対価及びその保有中における資産価値の増大をもたらす費用に該当せず、 また、その譲渡を実現するために直接必要な支出及び譲渡収入を増加させるために支出した費用にも該当しないことから、 本件譲渡に係る譲渡所得の計算上、総収入金額から控除される取得費及び譲渡費用には該当しない。 (ホ)原処分においては本件地元協力金を総収入金額に加えて計算したため、その反映として同額を譲渡費用にも加えて譲渡所得を算出したものであり、本来、総収入金額にも譲渡費用にも加えるべきでなかった本件地元協力金を、総収入金額及び譲渡費用の双方に加えたという点で不適切であったが、このことにより譲渡所得が増加したわけではない。 ロ 無申告加算税の賦課決定処分について 項に規定する「期限内申告書の提出がなかつたことについて正当な理由があると認められる」事実はないことから、同項に基づいてなされた賦課決定処分は適法である。 (2)請求人 イ 決定処分について (ロ)本件金員を支払うことによって宅地に転用が可能となり、本件譲渡の売買代金も宅地としての価額となったものであるから、本件金員は、本件土地の譲渡価額を増加させるために当該譲渡に際して支出した費用に該当する。 (ハ)原処分庁は、維持管理費を一括前払するもので譲渡費用には該当しないとしているが、本件金員は、農業をやめるに当たって本件土地改良区に支払った離脱金であって、これを支払わなければ本件土地を譲渡することはできないのであるから、本件譲渡に必要かつ相当な費用である。 (ニ)原処分庁は、本件地元協力金を譲渡費用として認容したのであるから、同様に譲渡費用として認めるべきである。 (ホ)原処分庁は、当該支出が家事費なのか農業に係る事業所得の必要経費なのか明らかにすべきである。 ロ 無申告加算税の賦課決定処分について (イ)本件譲渡に係る売買契約書について 本件譲渡については、本件売買契約書A及び本件売買契約書Bが存在するが、それぞれに記載された売買代金の差額 4,925,200円の内訳は 本件農地転用決済金 1,208,530円、 L土地改良区に対する農地転用決済金
126,670円 本件地元協力金の当初額
3,590,000円 の合計額であること。 (ロ)本件土地改良区について 農地転用決済金は、農地を転用した場合にのみ徴収されるものであり、所有者が同じでも、農地を宅地に転用するだけで農地転用決済金が徴収される一方、 農地を譲渡しても土地改良区の事業に関する権利義務の承継が行われれば、農地転用決済金は徴収されないものとされていること。 (ハ)L土地改良区について (ニ)本件地元協力金について B (A)(B)(C) 略 C (ホ)本件土地改良区の事務局の担当者は、当審判所に対して要旨次のとおり答述している (ヘ)請求人は、当審判所に対して、要旨次のとおり答述している。 ロ 関係法令等 ハ 譲渡費用 (ロ)これを本件についてみると、次のとおりである。 また、本件譲渡に関して農地法第5条の許可を申請するに当たり、土地改良区の意見書の添付が要件となっているが、意見を求めた日から30日を経過してもなおその意見が得られない場合には、その事由を記載した書面を添付すれば足りる旨規定していることからすると、必ずしも、本件農地転用決済金の納付が意見書の発行及び許可を申請するための必要な条件になっていないと認められる。 B 請求人は、本件金員を支払うことによって宅地に転用が可能となり、売買代金も宅地としての価額となったものであるから、本件金員は、本件土地の譲渡価額を増加するために譲渡に際して支出した費用に該当する旨主張する。 (ハ)以上のことから、本件金員を含む本件農地転用決済金は、譲渡費用に当たらないと認められる。 ニ 本件地元協力金 同様に譲渡費用として認めるべきである旨主張するので、本件地元協力金について検討 する。 〔1〕負担者は団地造成業者となっていること。 〔2〕本件地元協力金1,400,000円は、当該諸規定及び当該申し合せのとおり、宅地造成1区画当たり200,000円に本件土地の宅地造成区画数である7区画を乗じて算出されたこと及び 〔3〕H社は、Q町区加入金1,400,000円について、本来は宅地の購入者に対する立替金であって、売買のときに回収するものであるが、回収できない部分は会社の経費となっている旨原処分庁に申立てしていることからすると、H社が本件土地の宅地造成に関して負担すべきものと認めるのが相当である。 (ロ)そうすると、本件地元協力金は、本件譲渡の総収入金額に算入すべきでなく、また、譲渡費用にも該当しないと認められる。 ホ 分離長期譲渡所得の金額 〔1〕本件土地の売買代金として請求人が受領した 34,638,500円、 〔2〕H社が支払った農地転用決済金の合計額 1,335,200円 〔3〕請求人が受領した 2,190,000円の 合計額 38,163,700円が相当である。 (ニ)長期譲渡所得の特別控除額 (ホ)以上のことから、分離長期譲渡所得の金額は、33,909,815円となる。 ヘ 農業に係る事業所得の金額 (イ)A 農地転用によって農業を廃止又は縮小する組合員が、土地改良区の将来の維持管理費に相当する費用を支払うことについては、組合員の減少によって残存する組合員の負担が増加しないように措置する必要があるためであると認められる。 (ロ)
B 農地転用決済金は、農地転用により農業を廃止又は縮小する転用組合員が負担するものであるから、転用組合員にとっては、将来の維持管理費は必要でないにもかかわらず、農地転用の時に一括して負担しなければならないことになる。したがって、農地転用決済金は、将来の維持管理費の前払費用には該当せず、農地転用の時に一括して債務が確定する業務上の費用といえる。すなわち、農業用資産が農業用資産でなくなる時に生じた清算費用たる性質を有する支出であると解するのが相当である。 (ハ)そうすると、 〔1〕本件農地転用決済金は、平成12年7月24日付の通知書で支払が確定していること、 〔2〕本件金員は本件維持管理費算定基準に基づき算定されていること及び 〔3〕請求人は本件土地を本件譲渡の時まで農業の用に供していたことから、 本件金員は、本件土地について生じた清算費用であり、農業という業務について生じた費用と認められ、平成12年分の農業に係る事業所得の計算上必要経費に算入するのが相当である。 ハ)請求人は、農業を営んでいるにもかかわらず、原処分には平成12年分の農業に係る事業所得の金額が含まれていないことから、当審判所において調査した結果次のとおりである
ト 損益通算 農業に係る事業所得の金額の計算上生じた損失の金額は、1,201,058円となり、 当該損失の金額は、分離長期譲渡所得の金額33,909,815円から控除されることとなり、その結果、分離長期譲渡所得の金額は32,708,757円となる。 チ まとめ (2)無申告(2)無申告加算税の賦課決定処分について 決定処分は、その一部を取り消すべきであるから、無申告加算税の賦課決定処分の基礎 となる税額は、4,490,000円となる。 する正当な理由があるとは認められない。 から、無申告加算税の賦課決定処分は、その一部を取り消すべきである。 (3)その他 4研究・・・・・・・裁決に賛成 本事例の特徴 1. すでに同様の裁判例及び裁決事例が存在すること。 2. 請求人は、当初無申告であったこと。 3. 争点以外の農業所得を認定して損益通算を認めていること。 4−1裁判例等 (1)平成8年1月30日及び平成14年11月28日 新潟地裁は「農地を転用譲渡するに当たり土地改良区に対して支払う決済金等は譲渡費用に当たらない」旨の判決をしており、又平成13年1月25日国税不服審判所にも同様の裁決事例がある。 (2)すなわち平成14年の新潟地裁では、「本件決済金は、譲渡とは別個の転用という理由 により必要とされた費用であるから、譲渡に直接必要な費用とも譲渡価額を増加させるために譲渡に際して支出した費用ともいうことはできず、譲渡費用にはあたらない」、 「本件協力金等は転用された土地において土地改良施設を利用するためには負担金を支払わなければならないという理由により必要とされた費用であるから、同様に譲渡費用には当たらない」とし、 さらに 「協力金等は、土地改良施設の使用に対応して、受益者として負担する性質のものであるから、「改良費」(所得税法38条1項)として、本件土地の取得費に該当すると解する余地がある。しかし、原告は本件確定申告において、取得費を収入金額の5%に相当する金額としているから、仮に本件協力金が取得費に該当するとしても、本件譲渡所得に係る所得税額には影響を及ぼさないこととなる。」として、決済金は譲渡費用には該当しないこと、地元協力金は取得費に該当すると判示している。 (3)本事例において請求人は、「本件金員は、維持管理費の性格を有するものではなく、農業をやめるに当たって本件土地改良区に支払った離脱金であって、これを支払わなければ本件土地を譲渡することは出来ないのであるから、本件譲渡に必要かつ相当な費用である」として、離脱金と主張している以外は、特に新たな主張をしていない。 (4)本裁決においては、上記新潟地裁のような協力金が「取得費」に該当するか否かは判示していない。 (5)譲渡費用に該当するとの意見が述べられている書籍等は、「土地改良区の組合員が、組合員資格に係る権利の目的たる土地を譲渡するに当たり、同区に支払った決済金は、場合により譲渡費用に当たると解すべきであろう」(金子宏著「租税法」第9版増補版P227)にみられるぐらいで、積極的なものは見あたらない。 (6)裁決では、法33条3項の「その資産の譲渡に要した費用の額」として、 「本件農地転用決済金は、土地改良区内の農地を転用する場合には、譲渡が伴わなくても徴収される反面、農地を譲渡したとしても転用を伴わない場合は徴収されないこと」 「本件譲渡に関して農地法第5条の許可が必要であるところ、申請に当たり土地改良区内の農地である場合には、土地改良区の意見書の添付が要件となっているが、30日を経過してもなおその意見が得られない場合には、その事由を記載した書面を添付すれば足りることからすると、必ずしも、本件農地転用決済金の納付が意見書の発行及び許可を申請するための必要な条件になっていないと認められる。」 「したがって、本件農地転用決済金は、本件土地を譲渡するために直接かつ通常必要な費用であると認めることはできない。」としている。 (7)ちなみに土地改良法の規定の趣旨・目的は「およそ権利義務は人に属するものであり、特別の規定がないときは、土地改良区の事業に関する権利義務も又その組合員に属する。したがって、たとえば地区内の自作農地を他人に譲渡した場合は、その権利(たとえば、換地計画もしくは交換分合計画に定める清算の支払金、一時利用地についての仮清算金の支払い)や義務(たとえば、換地計画もしくは交換分合計画に定める清算 の徴収金、事業に要する費用の負担)は、依然としてその土地について組合員でなくなった譲渡人が有し、その土地につき組合員となった譲受人は、何の関係も有しないとすれば、土地改良事業の円滑かつ効率的な実施が阻害されることになる。しかし、他面、事業遂行の便宜のみを図ると組合員または第三者の利益を害することになる。そこで本条は、組合員資格の得喪に基づく権利義務の処理につき場合を分けて規定を設けている。」とした上、 第2項については、「その土地につき新たに組合員たる資格を取得した者の取得原因が事項などによる原始取得である場合、あるいは前主の権利が第1項の権利の承継によらず消滅する場合・・・・・・である。この場合、原則として資格喪失の両当事者の意思の合致を欠くから、権利義務の移転を認めると、結局裁判によるのでなければ両者のバランスがとれず一方の利益を害するおそれがある。したがって、この場合は、資格喪失者と土地改良区とは、その喪失の時における事業に関する権利義務につき必要な決済を行い、資格取得者は、その取得時から組合員として権利有し義務を負うものとした。」、 「必要な決済の内容は、資格喪失者の過払い分の賦課金などの払い戻し、未払分の納入のみならず、決済が本来的には、未確定債権債務関係を確定化する行為を指称することを意味することから、事業計画書等によりその者が負担すべき国、県営事業の負担金、分担金、賦課金あるいは公庫からの借入金が具体的に判明し得る場合にあってはそれらの未納金の納入を含む。土地改良施設の維持管理費についても同様である。」。 (構造改善局監修「土地改良法解説」P131) と説明されており、裁決の判断は妥当なものと思われる。 4−2確定申告がされていなかったこと (1)無申告であったことについては何もふれられていないが、譲渡金額が低い契約書Bで も3400万円を超えていること、又金額の異なる契約書を2通作成していることからみて、所得税が全く掛からないと考えていたとは思えないが、仮に「偽りその他不正の行為」が無かったとしても、単純無申告犯(所得税法241条)に該当するものと思われる。 (2)すなわち、法241条は「正当な理由がなくて確定所得申告等の規定による申告書をその提出期限までに提出しなかった者は、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。」と定めており、本事例は原則としてこれに該当するものと思われる。 (3)もっとも、すでに罰金等の支払いが行われたのか、それとも正当な理由があると認められたのか、さらには情状により刑の免除が行われたのかは定かではないが、全く法241条の適用が検討されずに単に無申告加算税の賦課だけ行われたのであれば問題があると思われる。 単純無申告でも租税危害犯として租税犯とされる。(松沢智著「租税処罰法」) 4−3損益通算について (1)国税不服審判所は原処分庁の上級庁ではなく第三者的な納税者の権利救済機関であると同時に税務行政の公正な運営を図る目的を持つものと考えられ、その性格は、行政機関でありながら司法に類似する争訟裁断機能を行う機関であるということができ、その結果として、審判所は、行政原理と司法原理の双方が制度それ自体に内在し、かつ両原理の調和が図られている。 (松沢智著「租税争訟法」P37〜39) さらにその運営は、争点主義的に運営すべきことが要請され、その結果審査の範囲は「争点主義」で、審判の対象は「総額主義」で行われることとなる。 これにより、審判の対象は更正処分の当否、すなわち、年分(度)における課税処分違法性一般であり(更に処分の不当性の存否であり)、審査の範囲は所得金額に対する課税の当否を判断するには必要な事項全般に及ぶこととなる。 (2)この観点から本事例を見ると、 請求人は、「本件金員は、原処分庁が主張する維持管理費の性格を有するものではなく、・・・・・・譲渡に必要かつ相当な費用である」と主張し、 原処分庁は「本件金員は、土地改良区に係る将来の維持管理費を一括前払いするもので・・・・取得費及び譲渡費用には該当しない」と主張した点について、 審判所は「農地転用決済金は、将来の維持管理費に相当する部分とされた金額については、次の理由から農業に係る事業所得の計算上必要経費に参入するのが相当である」として請求人が主張していない農業所得を算定し、その結果として損益通算を認めたことは妥当と考える (3)ところで「農業を廃し又は縮小する転用組合員にとっては、将来の維持管理費は必要でなく・・・・・農地転用の時に一括して債務が確定する業務上の費用といえる」との理由付けはどのように考えればよいのだろうか。 事業を廃止した場合であれば法63条(事業を廃止した場合の必要経費の特例)により 必要経費に算入されるが、縮小の場合にまでは適用されない事は明らかである。 (4)この場合、例えば100アールの土地を所有する者が99アールを転用した場合を考えてみると、原処分庁の言うように翌年以降の必要経費とすると、1アールの農業収入から99アールに掛かった維持管理費を繰延資産償却費として控除していくこととなり、一般常識からは理解し難い。 それよりは、裁決の言うように債務確定年度に一括して費用計上する方が合理的と思われる 5おわりに 結果的には、決済金を譲渡費用としたときとほぼ同様の課税となり、納税者は救済された 形となったが、無申告であった点など、多少疑問が残る事例である。 以上 |
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